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2017-10

きっと、うまくいく脚本本より:ランチョーの役作りの秘密4 - 2016.05.09 Mon

―ファルハーンとラージューは、もっとも観客の支持を得られるキャラクターのように思えます。なぜならほとんどの人はファルハーンかラージューに自己投影するでしょう。
ランチョーは憧れの対象にはなっても、共感や感情移入を呼び起こすキャラクターではありません。それについては悩みましたか?



注意は払っても、悩みはしなかった。
ランチョーの問題は純粋に物語の観点からいって、「弱点」がないことだ。
キャラクターに弱点がないとき、人は憧れるかもしれないが、感情的なつながりは感じない。
なぜなら何も問題を抱えていないからね。
彼はあなたの助けなどいらない。そしてやることなすこと成功するとしたら、共感や感情移入は起こらない。
観客として彼に心を費やそうとは思わないだろう。

たとえば、Taare Zameen Parでは(訳注:識字障害の少年)イシャーンに心奪われるだろう。
なぜならイシャーンが経験する問題を目にすることになるから、観客として完全に彼を助けたくなる。
脚本家の後ろ盾を得ているキャラクターだ。
きっとうまくいくの登場人物の中で、観客との間に強い感情的な結びつきを持つ可能性を持っているのは、ファルハーンとラージューだ。その二人が問題を抱えているんだ。成長の結果としての変身が映画内でも描かれる。
ランチョーには成長はない。はじめから最後まで同じなんだ。

僕にとってランチョーを演じることはとても大きな挑戦だった。
彼は感情的には脚本家の後ろ盾を得ているキャラクターじゃない。
たった一つの問題はピアを愛しているのに結婚できないことだけど、それは話の主題じゃないし。
これはもう一つの、彼を賢すぎるキャラクターとして描いてはいけない理由でもあった。だれものカンにさわるような人物になってしまうことも考えられた。
僕ははじめにラジュー(監督)に警告した。
ランチョーには注意しないと、極端に走る危険があるよ、と。監督として注意深く、僕をどこかへ滑って転ばせないようにしないといけないと伝えた。

それと、ランチョーをちゃんと機能させたのは脚本だと思う。脚本には本当に助けられている。

この物語は二人の友人が、もう一人を探すという話だ。
観客は、彼らの熱烈さ、あたたかさ、愛情を通してランチョーに感情的な絆を感じる。
僕は脚本を読むといつも、ファルハーンの父とのシーンと、ラージューの就職面接のシーンで泣いてしまうけど、ランチョーのために泣いたことはない。彼のために辛さを感じたことはない。感情面でランチョーと結びつくのは作業がいる。

それはシャルマンとマッディ(※マーダヴァン)の演技で表現された、ランチョーとの絆と愛からやってくる。
彼らがランチョーに対して感じるあたたかさが観客にも沁みだしてくるんだ。

もう一度他のレベルから見ると脚本はとてもうまくできていて、映画を通して観客はランチョーを探し、ファルハーンの目に映ったランチョーの断片を見るだけだ。
僕らはまだランチョーに出会っていない。
誰かの視点から見たわけじゃない、彼自身に会えるところは、ラストシーンにさしかかってからだけなんだ。

三人の友情の優しさ、愛、あたたかさが観る人にランチョーのあたたかさを伝える。
ランチョーというキャラクターにとって感情的に重要なポイントは、緊張しながら座って問題と向き合った友人たちが戻ってくるのを待つ場面だろう。(ファルハーンが父と対峙し、ラージューが就職面接に行く場面)
友人たちが困難に打ち勝って戻ってきたとわかったとき、彼は涙をあふれさせるんだ。


―あなたは長い間映画内でのジョイの自殺に納得していませんでした。激しく反対したといいます。なぜですか?

脚本の段階では、おそらく必要ではないと感じたんだ。その話は、息子が自殺したというウイルス学長のキャラクターを完成させるために作られたものだった。

実際、理由はみんなつながっているんだ。もし自殺が残ったままなら、僕にとっては二つのシーンに取り組むことが困難になりそうだった。
僕は人々がこのシーンを受け入れてくれるか、確信が持てなかった。
さっき話したように、ランチョーはとても人を怒らせる、耳障りなことを学長に言おうとしている。
こういう高い調子で学長にものを言うことが映画全編の調子に合っているならいいけど、僕らがやろうとしていることはそうじゃない。
だからそこは僕を悩ませた。墓地とその後のシーンはタフだったね。

そのすぐ後は教室のシーンで、彼は学長の権威に挑戦して、そこから逃れようとする。
あのせりふはとてもひねりの入ったものだ―工学を教えようとしたわけじゃないんです 教え方を教えたんです―僕はこのせりふのために観客から見放されるかもしれないと思った。これを口にするためにはかなりの格闘が必要だった。
ランチョーにとって、微笑みながらこう言って、カバンを拾って慌てて逃げ出すのが一番いいんじゃないかと考えたんだ。
もしこのせりふをヒーロー的な言い方や、はじめに指示されていたとおりの学長への態度で言ったとしたら、運の尽きだったろう。

でもジョイの自殺の話に戻ると、後知恵だけど、ラジューが自殺のシーンをなくさなかったことは正しかったと思う。
彼の取った他のすべての判断が正しかったようにね。


―実際の撮影は2008年の8月に始まりました。クライマックスのラダックのシーンは、もし当初のスケジュールで撮影できなければ、年間数ヶ月しか通行できないため来年になってしまうという場所でした。場所柄、ラダックのクライマックスを最初に撮影するという決断が下されていたわけです。実際には悪天候のために一年後に撮影されたわけですが、最初にクライマックスシーンを撮影してしまうのと比べて、演技に影響があったと思いますか?

僕は最初にクライマックスすべてを撮影できなくなってほっとしたよ。
チームにとってひどい経験だったにもかかわらずね。一日撮影して悪天候に襲われた。安全な場所へ皆が脱出しなきゃいけなかったのは恐ろしい出来事だった。でも終わりよければすべて良し。

まだそれぞれのキャラクターとして生きていなかったから、演技には苦労しただろうし。特に僕は。
シャルマンとマーダヴァンは、ベンガルールで最初のシーンをいくつかすでに撮影していたから、何らかの形は作り上げつつあったかもしれないけど、僕の撮影初日はラダックだったんだ。皆にとても嬉しいと伝えたよ。だってすべて撮り終えた後に撮影していたら得られたはずの信憑性が、確実に少なくなっていただろうからね。


―酔っぱらいシーンで実際にお酒を飲みましたね。メソッド演技法ですか?

酔っぱらったシーンを素面でやることは難しいとわかったんだ。
実際に飲んで演じれば演技を助けてくれる。助けを信じていた。僕の目標は自分のベストの演技をすることで、その達成の助けになるものなら何でも喜んで使う。
僕は演技や映画を高めるために役立つものを使うことに遠慮なんかしない。


―あなたが考える3 idiotsの核心はなんですか?

成功ではなく優秀さを追求しろ、というのが基本的に核心の考えだ。
違う言い方をすれば、自分が信じる、自分を幸せにすることをしろということ。あなたを幸せにするものは必ずしも常識的な成功と認識されているものへの助けにはならないかもしれない。

ファルハーンは動物写真家になりたくて、世間的にも、社会的慣習から言っても、彼がそれで成功するようには見えないかもしれない。はじめに、何が成功なのかということを理解する必要がある。自分が幸福を感じることをすること、それを良くやることが成功なんだ。金銭上の利益は少ないかもしれない。金銭上の利益を多く得られるとしても、その価値を無視するべきじゃない。

型どおりのやり方でも自分を幸福にしてくれることをやり続ければ成功は得られるけど、鍵の部分は自分を幸福にしてくれることをしろ、心満たされることを、というのがこの映画の核心のテーマだ。

<アーミルインタビュー終わり>




長らくおつきあいいただいてありがとうございました!
アーミル部分だけ訳しましたが、脚本本、監督や他のキャストのインタビューも満載で、「きっとうまくいく」ファンの方は必見です!※ただし英語



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● COMMENT ●

お疲れ様でした

今回の訳もものすごく感激しました。
この映画のことがもっともっと好きになったし、アーミルももっと好きになったし、監督も尊敬します。

何度見ても私が泣けるシーンはファルハーンと父親のシーンだし、面接のシーンだし、そのあと2人がランチョーに報告に来るシーンなのです。

ジョイの自殺にそんな背景があったとは。
初見ではとても衝撃的なシーンだっただけに、アーミルの思いもわかるし、結果的にあのシーンがあってよかったというのもよくわかります。

最近、アーミル信者を一人増やしました。
「見ろ、見ろ」と勧めていた人がやっと見て、茫然とした顔で「面白かった・・・」と言ってたのが面白かったです。

いまでもやっぱりインド映画ってトンデモ映画のイメージが強く、わざわざ時間をかけて見る気がしないようです。その人もまた人に勧めているようですが「・・・」という反応で見てもらえないらしいです。

この作品を見てからまる4か月。毎日インド映画を見てますが、集計してみたらまだ24作品でした。ついアーミル映画を繰り返して見てしまうのが敗因です。

飽きっぽい私ですが、インド映画ブームはまだまだ終わりそうにないので、基本映画をおさえたら、またアーミル作品制覇に戻ります。アーミル作品はどれもはずれがないというお話がよくわかります。

それもこれも、アーミルが作品を厳選し、口を出し、全力で取り組んでいるからなんですね。

すごいなあ、アーミル・カーン。

それにしても本当にアーミルファンの日本語サイトって見つからないですね。
このブログを立ち上げてくださった陽明さんのおかげで、アーミルの本当のすごさに触れられてうれしいです。英語で読むとやっぱり霧の向こうを見ている感じがぬぐえませんので。
これからもがんばってくださいね。

長文失礼しました。

>玻璃さま

コメントありがとうございます!
アーミルファンの方から反応をいただけるおかげで、長文の翻訳も続けることができました。
(さすがに何の反応もなかったら自分が意味を把握したところでやめていたと思いますw)

アーミルさんの作品への掘り下げや読み込み、ものすごく深くて鋭いですよね・・・!
観客として何となく観ていたところ、何回も観てはじめてわかったところ、他の人の感想を聞いてはじめて気づいた物語の弱点などなど・・・脚本を読んだときからすでにわかっていたなんてすごすぎる・・・!と思いました。

ある意味作った人だから当たり前?とも言えるのですが、そういうことがきっちり分析できて面白くできるならすべての映画が傑作になっちゃいますよね(笑)

アーミルファンがまた一人!めでたいですね・・・!!!
う~ん実際見たら多くの人が面白かったと言ってくれるのですが、インド映画の布教って難しいですね。
私は有無をいわさず自宅に来た友人の前でDVDを流したりしてます。
あとはyoutubeの音楽シーン動画を見せるとか・・・。

日本語サイト、少ないですね~。
PKに特化されてますが、リンクしている「PKを待ちながら」さんは私以上に熱いアーミルファン&私よりずっとインドに詳しい方なのでぜひそちらもご覧になることをおすすめします!
(すでにご存じだと思いますが)

インド映画全般ですが、アジア映画巡礼やこれでインディアといったサイトにも専門家の先生によるアーミル作品の詳しい解説が載っていたりしますので、過去記事を探してみてもいいかもしれません。

これからもどうぞよろしくお願いいたします!

翻訳ありがとう御座居ます

初めまして。
「きっと、うまくいく」は大好きな映画ですし、アーミルも好きなので翻訳はとてもありがたいです。
ところでプロフィールを変更されませんか。

>カミーノさま

初めまして、コメントをありがとうございます!
インタビューの翻訳を読んでいただいてありがとうございました。
そしてプロフィール…うっかりしておりました。PK公開決定しましたもんね!
変更しておきます。


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英語力ポンコツ、ヒンディー語ど初心者なぬるいインド映画オタク。祝PK日本公開!

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